食事で人生を変えた人


F.T.さん、33歳、女性:

二人目のお子さんを妊娠中のFさん。頼りにしていたセラピストのアドバイスで、糖質制限食を始めて 8年になっていました。この間は、タンパク質とでんぷん質を合わせて食べないようにしていました。はじめのうちは、この方法で、むかし悩んでいた腹部膨満感という消化の問題と、関節痛が解消されました。しかし、彼女の健康状態は少しずつ悪くなってきて、感染症をくり返すようになり、口・のど・舌のカンジダによる発疹、生理前症候群による強い緊張状態、頭痛がありました。最近では、慢性疲労症候群と筋痛性脳脊髄炎を診断され、重い疲労を感じていました。妊娠前から疲労感は始まっていたので、妊娠のせいで疲れているわけではありませんでした。ほかに、咽喉や鼻の粘膜の炎症、リンパ腺の腫れ、便秘もあり、生まれた時から皮膚炎があったそうです。

 

糖質制限食を行ってきた8年間で、Fさんの健康状態が悪化したのは間違いありませんでした。

粘膜の炎症があるときにはカルシウムの取り扱いに気をつける必要があります。感染への抵抗力が落ちるのは免疫系に問題が発生しているからで、その前には消化管に問題が出ているはずです。さらにその前には、組織の完全なる再生ができなくなっていて、そうなる前には組織内、細胞内に、有害な蓄積が増していて酸性度が高まっています。その温床には、マグネシウムと亜鉛の不足があります。

 

Fさんにはいくつかの食物アレルギーもあり、それが粘膜の炎症や関節炎につながっていると考えられました。それとは別に、消化器で発生していた不調は、消化能力の低さからくる食物不耐性が原因だった可能性もありました。食品が完全に消化されないと、不完全消化物は発酵し、膨満感を生み、カンジダなどの病的な微生物を異常に増やしたり、カンジダの発疹を招くことがあります。大腸内の毒性が高まれば、それとともに、肝臓の毒性も高まります。全身の毒性が高くなるので、こういうときに最初に集中して取り組むべき問題点は、組織や細胞内の酸性度を低くすること、です。

 

それは、つまり、解毒をするということですが、妊娠中に解毒を集中的に行うのは賢明ではありません。毒が母体から胎児へ流れるからです。胎児は有毒なゴミを溜め込むカプセルになってしまい、まだ未完成の胎児の肝臓を危険にさらします。まずは、彼女の食事を変えることが必要でした。ダイエタリー・ヒーリングの知識に従って食事改善を行い、食事に炭水化物を導入しました。彼女の健康状態を悪化させるのに、糖質制限食による炭水化物の禁止は大きな影響を与えていました。炭水化物を禁止していた間、タンパク質は、組織の維持よりも、エネルギー源として優先的に使われていました。タンパク質とでんぷん質を厳しく制限する、という彼女の8年間のルールに変更を加えました。植物性タンパク質には、でんぷん質も豊富に含まれているからです。野菜中心の食事計画を行おうとするときの落とし穴は、計画の背景にある理念に邪魔されて、実行が難しくなり手も足も出なくなることです。アレルギー反応を起こしやすい食品と、不耐性を起こしやすい食品も除去しました。野菜ジュースの飲用はしませんでした。

 

Fさんは、妊娠4ヶ月を迎えるまでに、体力が増すのを感じるようになり、頭痛にも悩まされなくなりました。その後、無事に女児を出産しました。2−3ヶ月間、母乳を与えていましたが、Fさん自身の全般的な健康状態は良くなく、頭痛がぶり返してきました。そこで、食事による徹底した解毒プログラムを行うことにしました。母乳を乳幼児に与えている間は、母親の血中の毒素が10倍濃縮で移行するため、母親が徹底した解毒プログラムをすることはできません。どのような毒性を持つ物質でも、母乳を通して母親から乳幼児に伝わるものは高濃度になります。そこで、授乳期が終了してから、Fさんは解毒プログラムを強化しました。その結果、彼女の体力は順調に増加し、消化も良い状態を維持できるようになって、頭痛は消え、あらゆる回復力も改善しました。